「花粉症にならないために」と考えるなら、まずは花粉症がなぜ起こるのか、その発症メカニズムを理解することが第一歩です。花粉症は、スギやヒノキ、ブタクサといった植物の花粉が原因で起こるアレルギー疾患の一種です。私たちの体には、外部から侵入してきた異物(抗原)を排除しようとする免疫システムが備わっています。花粉症の場合、この花粉を「体に害を及ぼす異物」と免疫システムが誤って認識してしまうことから始まります。花粉が鼻や目の粘膜に付着すると、体内で「IgE抗体」という特殊なタンパク質が作られます。このIgE抗体は、粘膜にあるマスト細胞という細胞の表面に結合します。そして、再び花粉が体内に侵入してくると、このマスト細胞上のIgE抗体に花粉が結合し、マスト細胞が刺激されます。刺激されたマスト細胞は、ヒスタミンやロイコトリエンといった化学伝達物質を放出します。これらの化学伝達物質が、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみといった花粉症特有のアレルギー症状を引き起こすのです。つまり、花粉症は、①花粉への暴露、②IgE抗体の産生(感作)、③再度の花粉暴露による化学伝達物質の放出、というステップを経て発症します。一度感作が成立してしまうと、少量の花粉でもアレルギー反応が起こりやすくなります。また、発症には遺伝的な要因も関わっているとされていますが、それだけでなく、生活環境や食生活、ストレスなども影響すると考えられています。例えば、大気汚染物質は粘膜を刺激し、花粉症の症状を悪化させる可能性があります。また、腸内環境の乱れが免疫バランスに影響を与えるという研究も進んでいます。この発症メカニズムを理解することで、花粉を体内に取り込まないようにする、免疫バランスを整えるといった、より効果的な予防策へと繋げることができるのです。
花粉症発症のメカニズムを知り対策へ