足のむくみと密接に関わっているのが、リンパの流れです。リンパ系は、体内の老廃物や余分な水分を回収し、排出するという重要な役割を担っていますが、このリンパの流れが悪くなると、むくみが生じやすくなり、さらに放置することで悪循環に陥ってしまうことがあります。リンパ液は、血液のように心臓という強力なポンプによって循環しているわけではなく、主に筋肉の収縮や弛緩、呼吸運動、動脈の拍動などによって、ゆっくりと一方向に流れています。そのため、運動不足や長時間の同じ姿勢、冷えなどによって筋肉のポンプ作用が低下したり、リンパ管自体に何らかの問題が生じたりすると、リンパ液の流れが滞りやすくなります。リンパ液の流れが悪くなると、組織の間に余分な水分や老廃物が溜まり、むくみ(特にリンパ浮腫)を引き起こします。このむくみが長期間続くと、さらにリンパ管が圧迫されたり、リンパ管の壁が硬くなったりして、リンパの流れがますます悪化するという悪循環が生じます。また、慢性的なむくみによって組織にタンパク質が蓄積すると、それが線維化(組織が硬くなること)を引き起こし、リンパ浮腫をさらに進行させ、治りにくくしてしまうことがあります。リンパ浮腫が進行すると、皮膚が硬く厚くなり、象の皮膚のように変化したり、感染症(蜂窩織炎など)を繰り返しやすくなったり、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。リンパ浮腫の原因としては、がんの手術(特にリンパ節郭清)や放射線治療の後遺症として起こる二次性のものと、生まれつきリンパ管の発達が不完全なために起こる一次性のものがあります。また、明らかな原因がなくても、長期間のむくみを放置することで、リンパ機能が低下し、リンパ浮腫に近い状態になることも考えられます。足のむくみが気になる場合は、単に水分が溜まっているだけでなく、リンパの流れが悪くなっている可能性も考慮し、適切なセルフケア(マッサージ、運動、弾性ストッキングの着用など)を行うとともに、改善が見られない場合は専門医(リンパ浮腫専門医や血管外科医など)に相談することが重要です。