身体的な病気だけでなく、精神的なストレスや強い不安感が、息苦しさという症状を引き起こすことがあります。特に、検査をしても呼吸器や循環器に明らかな異常が見つからないのに、息苦しさが続く場合は、心因性の要因を考える必要があります。このような場合、相談先として心療内科や精神科が適切な診療科となります。ストレスや不安が原因で起こる息苦しさの代表的なものに、過換気症候群があります。これは、精神的な不安や緊張、パニックなどによって、無意識のうちに呼吸が速く浅くなり(過換気)、血液中の二酸化炭素濃度が低下することで、息苦しさ、手足のしびれ、めまい、動悸、頭痛といった様々な症状が現れる状態です。発作的に起こることが多く、本人は「息ができない」「死んでしまうのではないか」といった強い恐怖感に襲われます。また、パニック障害の症状の一つとして、突然の激しい息苦しさや窒息感、動悸、めまいなどが現れることもあります。パニック発作は、特定の状況(例えば、人混みや閉鎖空間など)で起こりやすいこともあれば、予期せずに起こることもあります。うつ病や不安障害といった精神疾患でも、身体症状として息苦しさを感じることがあります。気分の落ち込みや意欲の低下、不眠といった精神症状とともに、原因不明の息苦しさや胸の圧迫感などが続く場合は、これらの疾患の可能性も考慮されます。心療内科や精神科では、まず詳しい問診を通じて、患者さんの精神状態やストレス状況、生活環境などを把握します。そして、必要に応じて心理検査などを行い、診断を下します。治療としては、精神療法(カウンセリングや認知行動療法など)や薬物療法(抗不安薬、抗うつ薬など)が中心となります。また、呼吸法やリラクセーション法などの指導も行われることがあります。身体的な検査で異常がないのに息苦しさが続く場合は、一人で抱え込まず、心療内科や精神科に相談してみることをお勧めします。