熱中症の症状は様々ですが、呼びかけに反応しない、意識が朦朧としている、けいれんを起こしているといった意識障害が見られる場合は、最も重篤な状態である「熱射病」の可能性が高く、命に関わる危険な状態です。このような場合は、ためらわずに直ちに救急車を呼び、一刻も早く医療機関での専門的な治療を開始する必要があります。救急車が到着するまでの間も、できる限りの応急手当を行うことが重要です。まず、安全な場所へ移動させます。日陰や冷房の効いた涼しい場所へ運び、衣服を緩めて体を楽にします。次に、体を冷やすことです。首筋、脇の下、足の付け根といった太い血管が通っている部分を、濡れタオルや氷嚢などで積極的に冷やします。霧吹きで体に水をかけ、扇ぐのも効果的です。ただし、意識がない人に無理に水分を飲ませようとしてはいけません。誤嚥して気道に入り、窒息する危険性があります。水分補給は、医療機関での点滴によって行われます。また、けいれんを起こしている場合は、周囲の危険物を遠ざけ、頭を保護するようにしますが、無理に押さえつけたり、口の中に物を入れたりしないようにしましょう。嘔吐している場合は、吐いたものが喉に詰まらないように、顔を横向きにするなどの配慮が必要です。救急隊が到着したら、発見時の状況や、どのような応急手当を行ったかを正確に伝えることが大切です。意識障害を伴う熱中症は、脳機能障害や多臓器不全といった深刻な後遺症を残す可能性もあるため、一分一秒でも早い対応が求められます。応急手当は、あくまで医療機関での治療が開始されるまでのつなぎであり、救命の可能性を高めるためのものです。決して自己判断で様子を見たり、医療機関への搬送を遅らせたりしないようにしてください。