ひょう疽は、指先や爪の周囲に起こる痛みを伴う感染症ですが、その原因は日常生活の中に潜んでいることが少なくありません。原因を知り、悪化させないための注意点を守ることが大切です。ひょう疽の最も一般的な原因は、黄色ブドウ球菌やレンサ球菌といった細菌の感染です。これらの細菌は、私たちの皮膚や鼻の中などにも普段から存在していますが、皮膚に小さな傷があると、そこから侵入して増殖し、炎症を引き起こします。指先は、日常生活で様々なものに触れる機会が多く、気づかないうちに小さな傷(ささくれ、切り傷、爪切りの際の深爪、トゲが刺さった跡など)ができやすい部位です。また、爪と皮膚の間も細菌が入り込みやすい場所です。特に、指しゃぶりをする癖のある乳幼児や、水仕事が多い人、爪を噛む癖のある人、あるいは手荒れしやすい人は、皮膚のバリア機能が低下しやすいため、ひょう疽になりやすい傾向があります。爪の食い込み(陥入爪)や巻き爪も、ひょう疽の重要な原因の一つです。爪が周囲の皮膚に食い込んで傷を作り、そこから細菌が感染して炎症を起こします。深爪や、足に合わない靴を履き続けることなどが、陥入爪や巻き爪を引き起こす要因となります。また、糖尿病や免疫抑制状態にある方、血行不良のある方は、感染に対する抵抗力が弱いため、ひょう疽にかかりやすく、また治りにくいことがあります。ひょう疽を悪化させないためには、まず、患部を清潔に保つことが重要です。しかし、自分で無理に膿を出そうとしたり、水疱を潰したりするのは避けましょう。細菌がさらに広がり、症状が悪化する可能性があります。また、患部を刺激しないように、絆創膏などで保護することも有効ですが、蒸れないように注意が必要です。水仕事をする際は、ゴム手袋を着用するなどして、患部を水や洗剤から守りましょう。そして何よりも、症状が軽いうちに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが、悪化を防ぐための最も確実な方法です。