貧血の原因は様々ですが、中には胃や腸といった消化管のトラブルが深く関わっているケースがあります。特に、原因不明の鉄欠乏性貧血が続く場合や、便の色が黒い(タール便)、腹痛や下痢、体重減少といった消化器症状を伴う場合は、消化器内科での精密検査が必要となることがあります。消化器内科は、食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆嚢、膵臓といった消化器系の臓器の病気を専門とする診療科です。消化管からの慢性的な出血は、鉄欠乏性貧血の重要な原因の一つです。例えば、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がん、大腸がん、大腸ポリープ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)といった病気があると、消化管から微量の出血が持続し、気づかないうちに鉄分が失われ、貧血が進行することがあります。特に、タール便は上部消化管(食道、胃、十二指腸)からの出血を示唆する重要なサインです。また、胃の切除手術を受けた方や、萎縮性胃炎などで胃酸の分泌が低下している方は、食事からの鉄分の吸収が悪くなり、鉄欠乏性貧血になりやすいことが知られています。さらに、小腸の疾患(例えば、セリアック病や吸収不良症候群など)によっても、鉄分だけでなく、ビタミンB12や葉酸といった赤血球の生成に必要な栄養素の吸収が妨げられ、貧血を引き起こすことがあります。消化器内科では、これらの消化管の病気を診断するために、内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)が中心的な役割を果たします。内視鏡検査では、消化管の粘膜を直接観察し、出血部位や潰瘍、ポリープ、がんなどの有無を確認することができます。必要に応じて、組織の一部を採取して病理検査(生検)を行うこともあります。もし、消化管の病気が見つかれば、その病気に対する治療(薬物療法や内視鏡的治療、手術など)が行われます。原因となっている病気が治療されることで、貧血も改善に向かうことが期待できます。原因不明の貧血に悩んでいる場合は、消化器系の問題も視野に入れ、医師に相談してみましょう。
胃腸の不調と貧血消化器内科の役割