指先や爪の周りが赤く腫れて痛むと、ひょう疽を疑うことが多いですが、似たような症状を引き起こす他の病気も存在します。自己判断せずに、正確な診断を受けることが大切です。ひょう疽と間違えやすい代表的な病気をいくつかご紹介します。まず、ヘルペス性ひょう疽(ヘルペス性指趾炎)です。これは、単純ヘルペスウイルス(口唇ヘルペスや性器ヘルペスの原因となるウイルス)が指先に感染して起こる病気です。ひょう疽と異なり、細菌感染ではなくウイルス感染が原因です。症状としては、指先に小さな水疱が多発し、ズキズキとした強い痛みを伴います。水疱は、最初は透明ですが、次第に濁ったり、破れてびらんになったりします。細菌性のひょう疽とは治療法が異なり、抗ウイルス薬の内服や外用が用いられます。次に、カンジダ性爪周囲炎です。これは、カンジダという真菌(カビ)の一種が爪の周囲に感染して炎症を起こす病気です。水仕事が多い人や、指しゃぶりをする乳幼児、糖尿病の方などに起こりやすいと言われています。爪の根元や側面に赤みや腫れ、軽い痛みが生じ、時には少量の膿が出ることもあります。治療には抗真菌薬の塗り薬が用いられます。また、乾癬(かんせん)や掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)といった皮膚疾患が、爪や指先に症状として現れることもあります。これらの場合は、指先の症状だけでなく、体の他の部位にも特徴的な皮疹が見られることが多いです。関節リウマチや痛風発作なども、指の関節に炎症や痛みを引き起こすことがあり、ひょう疽と区別が必要な場合があります。さらに、稀ではありますが、悪性腫瘍(皮膚がんなど)が指先にできることもあります。これらの病気は、それぞれ専門的な検査や治療が必要となります。指先の症状がひょう疽の典型的なものと異なる場合や、治療してもなかなか改善しない場合は、他の病気の可能性も視野に入れ、皮膚科や整形外科の専門医に相談し、正確な診断を受けるようにしましょう。