まぶたの縁に、小さなしこりのようなものができた。赤みや痛みはほとんどないけれど、指で触るとコリコリとした小さな塊が確かに存在する。瞬きをすると、何となく異物感がある。このような「痛くない、しこりのあるものもらい」は、「霰粒腫(さんりゅしゅ)」の可能性が考えられます。霰粒腫は、細菌感染によって起こる麦粒腫とは全く異なる病気です。私たちの上下のまぶたの縁には、まつ毛の生え際に沿って「マイボーム腺」という、涙の蒸発を防ぐための脂を分泌する小さな腺が並んでいます。霰粒腫は、このマイボーム腺の出口が何らかの原因で詰まってしまい、分泌されるべき脂が腺の中に溜まって、肉芽腫(にくげしゅ)という、おかゆのような内容物を含んだ塊を形成する病気です。細菌感染ではないため、基本的には痛みや強い赤みを伴わないのが大きな特徴です。発症初期は、本当に小さな点のようなしこりで、自覚症状もほとんどありません。しかし、詰まりが解消されないままだと、溜まった脂に細菌が感染して炎症を起こし(化膿性霰粒腫)、麦粒腫のように赤く腫れて痛むこともあります。霰粒腫の原因は、はっきりとはわかっていませんが、脂っこい食事の多い人や、ホルモンバランスの乱れ、不規則な生活などが関係しているとも言われています。治療法は、その大きさや炎症の有無によって異なります。ごく小さなものであれば、まぶたを温める「温罨法(おんあんぽう)」で脂の詰まりを溶かしたり、炎症を抑えるステロイド点眼薬を使用したりすることで、自然に吸収されていくこともあります。しかし、しこりが大きくなってしまったり、硬くなってしまったりした場合は、自然治癒が難しくなります。その場合は、眼科でまぶたの裏側や表側を数ミリ切開し、溜まった内容物を掻き出すという簡単な処置や手術が必要になります。痛くないからと放置していると、いざ治そうと思った時には大掛かりな処置が必要になることもあります。小さなしこりに気づいたら、まずは眼科で相談することが大切です。