近年、大人になってからADHD(注意欠如・多動症)と診断されるケースが増えています。子どもの頃から不注意や多動性、衝動性といった特性に悩んでいたものの、見過ごされてきたり、あるいは他の問題と捉えられていたりした人が、大人になって日常生活や仕事、人間関係で困難を感じ、受診に至ることが多いようです。では、大人がADHDの可能性を感じた場合、どの診療科を受診すれば良いのでしょうか。主な相談先となるのは、精神科または心療内科です。精神科は、うつ病や不安障害、統合失調症といった精神疾患全般に加え、大人の発達障害(ADHDや自閉スペクトラム症など)の診断と治療も専門としています。精神科医は、詳細な問診(現在の困りごと、子どもの頃からの症状の経過、家族歴など)、心理検査(WAISなどの知能検査や、ADHDの評価尺度など)、そして他の精神疾患との鑑別診断などを通じて、総合的にADHDの診断を行います。心療内科は、主にストレスなどの心理的な要因が身体症状として現れる心身症を扱いますが、大人のADHDの診療を行っている医療機関もあります。特に、ADHDの特性による二次的なストレスから、うつ症状や不安症状を併発している場合には、心身両面からのアプローチが期待できます。受診する医療機関を選ぶ際には、事前にその医療機関が大人のADHDの診療を行っているかを確認することが重要です。ホームページで確認したり、電話で問い合わせたりしてみましょう。また、大人のADHDの診断には、子どもの頃の様子が重要な情報となるため、可能であれば、保護者や兄弟姉妹に当時の様子を聞いてみたり、通知表や母子手帳などの客観的な資料を持参したりすると、診断の助けになることがあります。治療としては、薬物療法(中枢神経刺激薬や非中枢神経刺激薬など)と、心理社会的治療(認知行動療法や環境調整、ソーシャルスキルトレーニングなど)が組み合わせて行われることが一般的です。適切な診断と治療を受けることで、困りごとが軽減され、より生きやすくなる可能性があります。
大人のADHD診断と治療はどの科へ?