背中の痛みは、その痛みが発生している位置によって、原因となっている疾患をある程度推測することができます。もちろん、これだけで確定診断ができるわけではありませんが、受診する診療科を選ぶ際の参考になるかもしれません。まず、背中の上部、特に肩甲骨の間やその周辺に痛みがある場合、多くは筋肉の緊張やこり、いわゆる「肩こり」の延長線上にあることが多いです。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用、猫背などの不良姿勢が原因で、僧帽筋や菱形筋といった筋肉が硬直し、痛みを引き起こします。また、頸椎(首の骨)の問題、例えば頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症などが、肩甲骨周囲に放散痛として現れることもあります。次に、背中の中央部(胸椎のあたり)に痛みがある場合、変形性脊椎症や椎間板ヘルニア、圧迫骨折などが考えられます。また、内臓からの関連痛として、稀ですが大動脈瘤や、膵臓の病気(膵炎や膵がんなど)の可能性も考慮されます。背中の右側に痛みがある場合、特に右の肩甲骨下あたりや、右の脇腹に近い部分であれば、胆石症や胆嚢炎、肝臓の病気などが疑われます。これらの疾患では、腹痛や吐き気、黄疸などを伴うこともあります。一方、背中の左側に痛みがある場合、特にみぞおちの痛みとともに現れる場合は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、膵炎などが考えられます。また、狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気でも、左肩や左の背中に痛みが放散することがあります。腰に近い背中の下部(腰背部)に痛みがある場合は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、ぎっくり腰(急性腰痛症)といった腰痛の原因疾患が考えられます。また、腎盂腎炎や尿路結石といった泌尿器系の疾患でも、腰背部に強い痛みが生じることがあります。このように、痛みの位置は原因を探る上での重要な手がかりとなりますが、自己判断は禁物です。必ず医師の診察を受け、正確な診断を得るようにしましょう。
背中の痛みどの位置?場所で分かる原因疾患