指先や爪の周りが赤く腫れて痛む症状が現れた際、「ひょう疽」なのか「爪囲炎（そういえん）」なのか、どちらの言葉を聞いたことがあるでしょうか。これらの言葉は、しばしば混同されたり、同じような意味で使われたりすることもありますが、厳密には少し異なる意味合いを持つことがあります。そして、どちらの診断であっても、受診すべき診療科は基本的には共通しています。まず、「ひょう疽（瘭疽）」は、主に指先や足先の末節部（一番先の部分）に起こる化膿性炎症の総称として用いられることが多い言葉です。原因菌は主に黄色ブドウ球菌やレンサ球菌で、小さな傷から細菌が侵入して発症します。炎症が爪の周囲に限局している場合もあれば、指の腹側（指頭部）や、爪の下（爪下）にまで及ぶこともあります。一方、「爪囲炎」は、文字通り爪の周囲（爪の根元や側面）に起こる炎症を指します。こちらも主な原因は細菌感染ですが、カンジダなどの真菌（カビ）が原因となることもあります。ささくれや深爪、爪を噛む癖、水仕事などが誘因となりやすいです。症状としては、爪の周りの皮膚が赤く腫れ、痛みや熱感を伴い、進行すると膿が溜まることもあります。ひょう疽という言葉が、爪囲炎を含むより広範囲の指先の化膿性炎症を指す場合もあれば、爪囲炎が進行して指腹部などに炎症が広がった状態をひょう疽と呼ぶ場合もあるなど、医師や文献によって使われ方に若干の幅があるのが現状です。しかし、どちらの診断名であっても、細菌感染が原因であれば、治療の基本は抗菌薬の使用（塗り薬や飲み薬）と、必要に応じた排膿処置です。受診すべき診療科としては、まず皮膚科が第一選択となります。皮膚科医は、皮膚や爪の炎症性疾患の専門家であり、適切な診断と治療を行ってくれます。症状が重い場合や、爪の変形が著しい場合、あるいは深部に炎症が及んでいる可能性がある場合は、整形外科の受診が勧められることもあります。大切なのは、診断名にこだわりすぎることなく、症状が現れたら早めに医療機関を受診し、専門医の指示に従うことです。