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大人が発症する熱のない耳下腺炎の原因と種類
耳の下にある唾液腺の一つである耳下腺が腫れる症状は、一般的に子供が罹患するおたふく風邪、すなわち流行性耳下腺炎として知られています。しかし、大人の場合においても耳下腺が腫れるケースは少なくありません。特に興味深いのは、発熱を伴わずに腫れや痛みだけが生じる状態です。このような熱なしの耳下腺炎には、主に3つの代表的な原因が考えられます。1つ目は、唾石症と呼ばれる疾患です。これは、唾液を運ぶ管の中に、カルシウムなどが固まった石ができることで通り道が塞がり、唾液が溜まってしまうことで腫れが生じるものです。食事の際、唾液が盛んに分泌されるタイミングで急に腫れが強くなり、食後しばらくすると落ち着くという特徴があります。石が小さい場合は痛みも軽微ですが、完全に閉塞すると激痛を伴うことがあります。2つ目は、細菌性耳下腺炎の軽症例です。口腔内の細菌が唾液管を遡って感染を引き起こしますが、初期段階や身体の免疫力が維持されている大人の場合、全身性の発熱に至ることなく、局所の腫れと違和感だけで経過することがあります。これは、水分不足による口腔内の乾燥や、ストレス、過労などが引き金となります。3つ目は、反復性耳下腺炎です。子供に多い病気として知られていますが、大人の場合も再発を繰り返すタイプが存在します。これもウイルス感染ではなく、構造的な問題や免疫バランスの乱れが関与しており、熱が出ないまま数日で腫れが引くのが一般的です。さらに、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患の初期症状として、慢性的な耳下腺の腫脹が見られることもあります。この場合、熱よりも口の渇きや目の乾燥を伴うことが多いため、全身の状態を観察することが重要です。発熱がないからといって放置すると、炎症が慢性化して耳下腺の機能が低下したり、稀に腫瘍性の病変を見逃したりするリスクもあります。大人の耳下腺炎は、単なる疲れと片付けず、どのようなタイミングで腫れが出るのか、左右どちらなのか、あるいは食事との相関があるのかといった詳細を把握することが、正しい診断への第一歩となります。耳鼻咽喉科を受診し、超音波検査などで内部の状態を確認してもらうことが、迅速な解決につながるでしょう。