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反復性耳下腺炎を繰り返す40代女性の改善事例
本事例の研究対象である42歳の女性Aさんは、ここ2年ほど、3ヶ月に1回の頻度で右側の耳下腺が腫れる症状に悩まされていました。特筆すべきは、いずれのケースも発熱が全くなく、腫れも3日から5日程度で自然に消失するという点でした。当初、Aさんは近所の内科を受診しましたが、熱がないことから「疲れによるもの」としてビタミン剤を処方されるにとどまり、根本的な解決には至りませんでした。しかし、次第に腫れの頻度が高まり、仕事の重要なプレゼンの日と重なることが増えたため、当院の耳鼻咽喉科を精密検査目的で受診されました。初診時の超音波検査では、右耳下腺内に微細な導管の拡張が見られ、過去の炎症の痕跡が確認されました。CT検査で結石は否定されたため、慢性的な「反復性耳下腺炎」という診断が下されました。Aさんの生活習慣を詳細に分析したところ、いくつかのリスク要因が浮かび上がりました。まず、仕事中の集中力が非常に高く、数時間にわたって水分を一口も摂らない習慣があったこと。次に、慢性的なストレスにより夜間の噛み締めや食いしばりが激しく、咀嚼筋の緊張が唾液管を外側から圧迫していたこと。そして、ダイエットのために極端に食事量を減らしていた時期に症状が出やすいという相関性が見つかりました。改善に向けたアプローチとして、まずは「物理的な唾液流出の改善」を実施しました。具体的には、1時間ごとにコップ1杯の水分を摂取するリマインドの設定、および歯科医院でのマウスピース作成による食いしばりの軽減です。さらに、漢方薬の「柴苓湯」を処方しました。これは水分代謝を整え、局所の炎症を抑える効果が期待される処方です。これらの対策を継続した結果、Aさんの耳下腺炎はその後半年間にわたって1度も再発していません。本事例から導き出される知見は、大人の熱なし耳下腺炎が、単一の病因ではなく生活環境や身体のクセが複合的に絡み合って生じる「生活習慣病」的な側面を持っているということです。単なる消炎鎮痛薬の投与だけでなく、なぜその場所に負荷がかかっているのかという背景要因まで踏み込んで対策を講じることが、慢性的な不調から脱却するための鍵となります。